2026年8月6日 ベータ公開

Cloudflare Kitesurf 人間が見ないWebのための、
ブラウザ

ChromeやSafariは「人間が画面を見て操作する」前提で作られています。 Kitesurfは、その前提を捨てたブラウザです。使うのはAI。だから、人間しか要らない機能を全部そぎ落としました。

提供 Cloudflare(Browser Runのオプション) 開発期間 12週間 料金 ベータ期間中は無料
SECTION 01

Kitesurfとは何なのか

まず「ブラウザ」という言葉が指すものを分解すると、話が一気に分かりやすくなります。

ブラウザは、2つの部分でできている

普段使っているChromeを思い浮かべてください。画面にはタブがあり、URLを入れる欄があり、 ブックマークバーがあり、右上に拡張機能のアイコンが並んでいます。 そして、その下に実際のWebページが表示されている。

この「上の方の飾り」は全部、人間が操作するために付いているものです。 AIがWebページを読むだけなら、タブもブックマークも拡張機能も1ミリも要りません。 でも従来は、AIにWebページを読ませたいときも、この全部入りのブラウザを丸ごと起動していました。

従来(Chromium)全部入り
タブ
ブックマーク
ページ本体+人間向けUI重い
Kitesurfそぎ落とし済み
タブ テーマ 拡張機能 ブックマーク ピクセル単位の正確な描画
ページ本体だけとても軽い

→ Kitesurfは Chromium を軽量設定にしたものではなく、ブラウザの中身そのものを作り直したものです。

結果、どうなったか

そぎ落とした分だけ、動かすのに必要なメモリとCPUが激減しました。ただし良いことばかりではありません

メモリ / スクショ 1 / 4.7 Chromium比。実測 57.8 MiB
メモリ / HTML抽出 1 / 7.0 実測 39.4 MiB
処理時間 1.7〜1.8× Chromiumより遅い
Web標準テスト 235,000+ サブテスト合格。DOM 97% / HTML 96% / SVG 97%
ここが一番の理解ポイント Kitesurfは「速くなった」のではなく「遅くなったが、圧倒的に軽くなった」ものです。 人間が画面の前で待つブラウザなら1.8倍遅いのは失格ですが、AIが裏で何万ページも処理する用途では、 効いてくるのは1回あたりの速さではなく同時に何本動かせるか1回あたりいくらか。 機械にとっての「良いブラウザ」は、人間にとってのそれとは違う——というのがこの製品の主張です。

できないこと

そぎ落としたので、当然できなくなったこともあります。ここを知らずに使うとハマります。

動画の再生非対応。動画が絡む処理には使えません。
WebGL / 3D描画非対応。凝ったアニメーションのサイトは正しく表示されません。
ログインしたまま長時間の作業1回ごとに使い捨てる設計(ステートレス)なので、状態を保ち続ける処理には向きません。
ボット対策の突破「あなたは人間ですか?」のチェックに応答できません。
SECTION 02

似たサービスと、何が違うのか

「AIにWebを読ませる」ためのサービスは既にいくつもあります。その中でのKitesurfの立ち位置。

大きく2つの流派がある

ひとつは「読むだけ」の流派。URLを渡すと中身のテキストが返ってくる。シンプルで速いが、 ボタンを押したりフォームに入力したりはできない。Firecrawlがこれです。

もうひとつは「操作する」流派。クラウド上に本物のChromeを1台立ててくれて、 こちらから遠隔でクリック・入力・ログインまでさせられる。BrowserbaseBrowserlessSteelがこれです。自由度は高いぶん、1台ごとに重くて高い。

Kitesurfは、この地図の中でひとつだけ違う場所に立っています。

→ 他社は全員「クラウドに本物のChromeを置く」方向。Kitesurfだけが「ブラウザの中身を作り直して軽くする」方向に振れています。

観点別の比較

サービス 中身 できること 向いている量
Kitesurf 独自エンジン
Workers上
読む・スクショ・自動処理
(ログイン維持は不可)
超大量
Firecrawl 抽出API URL → Markdown。ブラウザ操作はできない 大量
Cloudflare
Browser Run
本物のChromium ほぼ何でも。Kitesurfと同じAPIで切替可能 中〜大量
Browserless 本物のChromium 操作可。簡単なボット対策なら突破できる 中量
Steel / Kernel 本物のChromium 操作可。AIエージェント運用向けの管理機能 中量
Browserbase 本物のChromium クリック・入力・OAuthログイン・状態の維持まで 少〜中量
自前でPlaywright 本物のChromium 何でも。ただしサーバー運用は全部自分持ち 運用次第

どの観点で「優れている」のか

万能ではありません。できることの幅では、Browserbaseなどの本物のChromium勢に負けます。 ログインが必要な作業も、3Dのサイトも、ボット対策のあるサイトも扱えない。

Kitesurfが明確に勝つのは「単純な処理を、とにかく大量に回す」という一点です。 メモリが1/4.7〜1/7ということは、同じサーバー資源で4〜7倍の本数を同時に走らせられるということ。 1回が1.8倍遅くても、7本同時に走れば全体の処理量は勝ちます。

乗り換えコストがほぼゼロ Cloudflare Browser Runを使っているなら、リクエストに ?browser=kitesurf を足すだけで切り替わります。コードの書き換えは不要。 「軽い処理はKitesurf、複雑な処理はChromium」をパラメータ1つで使い分けられるのが、実務上いちばん効く差です。
SECTION 03

うちの会社なら、どう使えるか

判断基準はひとつだけ。「同じ処理が、大量に繰り返し発生するか」。 月に数回しか動かさないものにKitesurfを使う意味はありません。

スクレイピングを「商品」にする

本命

Browser Runには自然言語で「このページから会社名と電話番号を取って」と書くだけで構造化データが返る機能があります。 従来のスクレイピング案件は、サイトが改修されるたびに指定が壊れて保守地獄になるため見積もりが合いませんでした。 そこが自然言語指定になると開発も保守も工数が激減し、断っていた案件が粗利の出る案件に変わります。

競合価格モニタリング/営業リスト自動生成/業界情報の定点収集
→ コスト削減ではなく、売れる商品が増える

保守サイトの定期監視

◎ 適合

納品後の保守案件は積み上がっていくのが制作会社の構造。全サイトの主要ページを毎日巡回して、 表示崩れ・エラー・リンク切れ・改ざんを自動検知します。保守サービスの付加価値として請求できるのが強み。

30サイト × 10ページ × 30日
= 9,000リクエスト / 月

AI機能のWeb取り込み基盤

◎ 適合

「URLを入れたら要約」「社内サイトをAIで検索」といった機能を作るとき、 最近のサイトは普通に取得してもHTMLが空なので、ブラウザで描画してからでないと中身が取れません。 Markdown出力がそのままAIへの入力になります。

ユーザー数 × 取り込みURL数
= 使われるほど量が増える

OGP画像・サムネの自動生成

◎ 適合

自社の画像生成サービスで、生成物ごとにSNS用のOGP画像やサムネイルが要るはず。 HTMLテンプレートを組んでスクショ化する方式です。ピクセル単位の精度が不要な用途なので、 Kitesurfの割り切りと完全に噛み合います。

生成数に完全比例
= サービスが伸びるほど効く

納品前のキャプチャ確認

○ 要検証

全ページ × 全画面幅のスクショを毎晩自動取得し、前日との差分でレイアウト崩れを検知。 量は確実に出ます。ただしピクセル単位の厳密な差分比較には向かないため、 「大崩れの検知」レベルで使えるかは実測が必要です。

10案件 × 80ページ × 3画面幅
= 2,400枚 / 日

常駐先への技術提案

○ 適合

客先で「E2Eテストが遅くて並列度を上げられない」「スクレイピング基盤のサーバー代が」という課題は普通にあります。 エンジニアが持ち込める提案の弾として使えます。

→ 常駐エンジニアの評価に直結する

逆に、使うべきでない場面

ここを一緒に示せると、提案の説得力が上がります。

デザイン参考サイトの収集見た目の正確さが命なので、Kitesurfの割り切りと真逆。Chromiumを使うべき。
会員サイト内の自動操作ログイン状態を保てないため不可。Browserbase等の出番。
1回だけの作業手作業やローカルのスクリプトで十分。コスト差が出ない。
凝ったアニメーションのサイトWebGL非対応のため正しく描画されない。
未検証の項目(発表前に確認したいこと)
Cloudflare公式ドキュメントがKitesurfについて明記しているのは「スクリーンショット・HTML抽出・自動処理」まで。 PDF生成やページ状態の取得がKitesurfで動くかは公式に記載がなく、未確認です。 また、上記の適合度は公表スペックからの推定であり、自社サイトでの実測はまだ行っていません。